2016年10月16日日曜日

ESG投資の神話と現実


HBSのジョージ・セラフェイム准教授の論文、ESG投資の神話と現実という論文の中の対比です。

ESG投資のフレームワークを作る上で重要な前提が含まれています。神話に基づいて現実でないものを前提とするととESG投資はうまく機能しないでしょう、という意味では極めて重要です。日本と欧米でまだ異なる面もあります。

私から見てとりわけ重要なのは神話1と神話5でしょうか。

神話1
The net financial effect of corporate efforts to address environmental and social issues is to reduce corporate returns on operating capital and, along with them, long-run shareholder value

現実1
Only a relatively small subset of ESG issues is what might be described as “material” and hence “value-relevant” for each industry Initiatives and investments designed to manage material ESG issues will produce results, in terms of increases in profits as well as stock returns

神話2
ESG is well on its way to being integrated into mainstream investment management and capital markets with over $60 trillion in assets now subscribed to the Principles for Responsible Investment established by the UN (UNPRI)

現実2
Only a small percentage of those assets are taking into account ESG data in a systematic way. The overwhelming percentage is just using ESG screens

神話3
Companies have little if any ability to influence the kinds of investors who buy their company’s shares

現実3
Companies can and have influenced their investor base. A real example is the case of Shire, which managed to significantly change their share holder base within 5 years by using sustainability strategy and grated reporting to resist excessive pressure for short-term performance

神話4
It is nearly impossible to do good fundamental analysis taking into account ESG data because the data infrastructure is really lacking

現実4
Progress on data availability and quality has been made over the last
 few years. Companies, investors, stock exchanges, data providers and NGOs have all played a key role in advancing ESG data infrastructure

神話5
ESG is only about managing risk

現実5
There are numerous examples of companies that have used ESG integration as an enabler to achieve long term value and grow their top
 line: Dow Chemical, General Electric, Unilever

神話6
Consideration of ESG factors in investment portfolio construction is contrary to fiduciary duty

現実6
Policy makers and multi-stakeholder initiatives are now working to mote reforms in the legal interpretation of fiduciary duty. Changes are already happening (Department of Labor, October 2015 new statement to acknowledge the relevance of ESG issues on economic value)

2016年10月11日火曜日

日本がノーベル経済学賞の不完備契約理論から学ぶことは?


2016年のノーベル経済学賞は、米ハーバード大学のオリバー・ハート教授、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のベント・ホルムストロム教授に決まりました。

テーマは不完備契約理論。契約は完全ではないから、利害関係が異なる者同士の協調をいかに生み出すか? その取引、ガバナンスメカニズムをどう設計できるか?

日本も、日本版スチューワドシップコードや、コーポレイトガバナンスコードなどソフトロー(契約)で投資家による企業へのガバナンスを強化する施策を打ち出しました。しかしながら、基本的に契約は不完備契約ですから、そのコードを設定した目的が実現されるかどうかはまだまだ未知数です。

ガバナンスを強化したら企業は収益性が高くなるのか? 
国ごとのガバナンスの形態の違い、歴史的経由も無視して、欧米型の株主型へ日本が移行を目指すことがいいことなのかどうか?
ROE
というKPIを企業価値の代理変数としていることの無理はないのか?

現在のところ、企業の収益性が高まった証拠も、企業が積極的にリスクをとった設備投資をしている証拠、投資期間が長期化した証拠はありません。インデックス、パッシプ運用している運用会社に、企業と対話するインセンティブ、またその見返りはあるのかどうか?etc

不完備契約理論を紐解くと、むしろ、ある条件のもとでは、投資家のガバナンスの強化が企業価値の低下を招くケースも理論的に示すことが可能だと思います。日本も会計や法律の専門家主導によるガバナンス改革に、ゲーム理論家、不完備契約の理論家による視点を取り入れた方がいいでしょう。

2016年10月6日木曜日

環境経営学会


環境経営学会で、
「日本の株式市場のESGデータ解析から導かれるインプリケーション」というテーマで発表します。

 当論文は、日本の株式市場を対象としてESG投資のデータ解析からインプリケーションを得ることを目的とする。
 第1に、企業の財務パフォーマンスとESGのパフォーマンスの統合度合いについて考察する。
 第2に、企業の財務パフォーマンスとESGパフォーマンスと企業価値、および超過リターンの関係を考察する。
 第3に、企業のESGパフォーマンスの中で、ESGのどれが超過リターンに寄与しているかをデータ解析によって解明する。
 第4に、財務パフォーマンスとESGパフォーマンスを統合した企業価値モデルを決定木アルゴリズムによってモデル構築し、そのインプリケーションを考察する。以上のアプローチにより、日本の株式市場のESG投資に関して機関投資家(アセットマネージャー、アセットオーナー)の以下の疑問に答えることが可能となる。

日本の株式市場でESG投資は超過リターンを生み出すのかどうか ?
セクター(33業種)ごとにESG投資はどのような違いを生み出しているのか?
セクター(33業種)ごとに、財務とESGパフォーマンスの両立度合いはどのように異なるのか?
重要なESG要因を特定することがESG投資戦略においてどのような意味を持つのか?
ESGのどの分野が超過リターンを生み出す上で貢献しているのかどうか?
ESG要因が株価に織り込まれている度合いをどのように評価することができるのか?
ESGと財務の両立度合いを見る上での評価軸と基準値の設定はどれが適切なのか?
投資家はESG投資でどのような戦略を持つべきなのか?
以上の分析と考察の結果、日本の機関投資家がどのようなESG投資戦略をとるべきかを明らかにすることで、今後の日本のESG投資市場の拡大に寄与することを目的とする。

2016年10月4日火曜日

ロバートシラーの考え方をESG投資に応用すると、、、


SIRの熊沢です。
ノーベル経済学賞をとったロバートシラーの研究で、特に、ボラテリティと市場の情報効率性の関する研究がESG投資を考える上で参考になる面がある。

個別銘柄とボラテリティ、市場全体のボラテリティの差に注目する。ボラテリティはいかにわれわれが知ることができないかを表す指標と考えることができる。

逆に、個別銘柄の(インポライド)ボラテリティと情報効率性の関係を私は以下のように整理した。

投稿数が多いか少ないか、ボラテリティが高いか低いかで4つの象限に分けて、

1 コメント多い、ボラテリティが低いノイズ比率が多い
2
コメント多い、ボラテリティが高い
シグナル比率が高い
3
コメント少ない、ボラテリティが低い
シグナル比率が低い
4
コメント少ない、ボラテリティが高い
真のシグナルが不明

イベントが起きるかどうかもそうだが、そのイベントの意味を市場が取り込むプロセス(スピード)がボラテリティに反映していると考えられる。
情報がやりとりされるインタラクションが多い時はvoliatilityは高くなるが、その情報の市場価格への反映が済めばvolatilityは低下する。

したがって、以上の区分で、2のセグメントがシグナル比率が高く、投資対象に適していることがわかる。

ESG情報という情報も、超過リターンと結びついているかというよりも、volatilityを低めているかという観点から考えた方が情報の有用性の判定としては正しい判断が出るだろう。

ESG投資って何?

SIRの熊沢です。今週はCETECの展示会です。
CETEC向けのプレゼンです。ご参考ください。

https://prezi.com/xlqhthkvqtm-/esg-ver2/

2016年10月3日月曜日

ESG信用リスクスコアリングのデモ


SIRの熊沢です。CETEC出展のために、デモを作りましたので、ご参考ください。

意味合いとしては、このステムで、

先般のPCデポのような、ネットの書き込みからネガティブなESG情報が伝播し、財務リスク、株価急落にまで及ぶケースがあっても、このシステムでその変化をいち早く捉えることができます。