2016年5月31日火曜日

スターバックスがサステナビリティボンドを発行


スターバックスはサステナビリティボンドで545億円の調達をおこなう。面白いのは、調達した資金は、コーヒー労働者への適正報酬や野生生物保護などに充てられる点だ。

グリーンボンドは多いが、このような社会課題をテーマとしたソーシャルボンド、サステナビリティボンドは珍しい。

低金利の中で利回りはそこそこだが、社会に良いことにお金を限定して使うという意味では、これからもっと拡大していい金融商品だと思う。

日本の大企業の場合は様々な事業を行っていて、世の中にいいことをやっているけど原発事業やっていますみたいな股裂状態が非常に多い。資金使途を限定することによって、大企業でも、投資家に投資する意味を与えることができる。

2016年5月30日月曜日

インパクト投資家マニフェスト宣言


我々はインパクト投資家たらんとする。インパクト投資マニフェストをここに宣言する。日本で、世界でも、まだ生まれたばかりのこの概念の、まさにフロンティアであり、そのパイオニア、実践者たらんと志している。

我々は、ファイナンシャルリターンだけでなく、ソーシャルリターンも含めた、リターンの極大化を組織の目標に明確に掲げる。ソーシャルリターンは目には見えないが確実に存在し、我々の組織のビジョンを実現するための最も価値ある羅針盤であり、根本的な存在意義なのだ。

我々は、インパクト投資が可能とする、投資のソーシャル化、持続可能な社会を実現するため試みを完全に支持する。より野心的に、 我々のビジョンは、投資産業の進化、人類の進化に貢献することなのだ。そのための最上の戦略は、与えることによって増え貢献することにより高まるソーシャルリターンの存在を信じ、投資家に価値を提供し続けることなのだ。

現代は、生活者と企業は完全に対等な存在なのだ。それどころか、ソーシャル化が進む世界の中で、生活者の支持、インタラクション、共感を生み出すことができなければ、企業は生活者に価値を提供することは既にできない。すべての企業はファイナンシャルリターンを生み出すと共に、ソーシャルリターンを生み出す、ソーシャルカンパニーなのだ。ソーシャルインパクトはその企業が持続可能かどうかを示す最も確かな羅針盤なのだ。

我々は、独自の手法でこのソーシャルインパクトを測定評価し、投資判断に役立てる。また、企業がこの両方のリターンを極大化するべく支援を行う。また、2-3年以内には「ソーシャルインパクトを新しい通貨にする」社会的証券取引所を創設する

2016年5月28日土曜日

インパクト投資分野の中でのグリーン金融の位置付けは?


環境経営学会で基調公演をされた末吉竹二郎さんが、527日の日経の経済教室にも、「環境が変える金融ビジネス 化石燃料バブル崩壊も」掲載されている。

最近特に、化石燃料の埋蔵が座礁資産化する可能性と、それにお金を貸している金融機関のリスクが指摘されるようになってきた。また、ダイベスト(化石燃料からの資金の引き上げ)の動きも日本では全く見られないが海外では進んできた。

COP21のパリ協定により、企業が炭素効率を良くすることができれば良いというスタンスから、脱炭素しなければならないというように変化してきている。

この考え方は、昔からエコロジー経済学者のハーマンディリーが主張してきた(図表)

これこそ不都合な真実で、企業や政府が見て見ぬ振りをしてきた問題だ。

私が末吉さんに質問したのは、
トヨタがグリーンボンドを発行するグリーン金融の流れがある。グリーンボンドは発行体に資金使途を限定するマイナスがあるのになぜ企業はグリーンボンドを発行するのか? 

回答
投資家の需要と供給を考えると、今の投資家の主流においては、グリーンという社会に良いことにお金が流れる+債権の組み合わせ(元本+若干の利回り)というのが丁度いいというような回答だった。

インパクト投資ではファイナンシャルリターンとソーシャルリターンのマトリクスの組み合わせで考えるケースが多いが、運用される資産のリスク/リターンのプロファイル、投資家のプロフィアルによって、運用資産のマッチングを考えていく必要もある。

日本では何故か、インパクト投資の中でグリーン金融を別物扱い、無視されているのだが、インパクト投資の中で環境エネルギー分野が重要な位置付けを占めることは間違いないだろう。ソーシャルインパクトボンド(SIB)も再生可能エネルギーが一番スキームが組み立てやすい面がある。

企業側からインパクト投資を考える視点も重要


インパクト投資というと投資家の側からだけ考えがちであるが、企業側からインパクト投資を捉える視点も重要である。

例えば、トヨタによる2050年を展望した「脱エンジン宣言」と同社による長期株主育成を目的とするAA型種類株の発行し、社会性の高い企業活動を具体的なファイナンスの手段で支える動きがある。

また最近、米スターバックスはコーヒー栽培・流通を長期的にサステナブル(持続可能)にするためのプロジェクトの資金調達で5億ドル(約545億円)規模の米サステナビリティボンドを発行した。この10年物優先債の表面利率は2.45%。調達した資金は、具体的にはコーヒー労働者への適正報酬や野生生物保護などに充てられる。このボンドも投資家から非常に人気になっていた。

グリーンボンドの発行は多く見られるが、事業会社のソーシャルボンドの発行は非常に少ない。全世界でもまだ20回ぐらいしか発行されていない。

企業側、資金調達側からすると、資金用途をあえて限定することは、フリーハンドで調達するよりも不利のように思えるが、企業側からすると、自社のコミットメントを示すことで、ブランディングがそのデメリットを上回るメリットがあるということなのだろう。

このように、資金調達側が資金用途をソーシャルやグリーンに限定すると、投資側はインパクト投資を行いやすくなる。

このような動きは、今のところはトヨタやスターバックスのような、消費者から認知された一流企業からしかこの動きは見られないが、今後ますます広がっていくだろう。

2016年5月27日金曜日

6月3日のカンファレンスの講演者のご紹介


63日のBloombergカンファレンスの鈴木絵里さんからのビデオレターが届きました。素晴らしい内容でしたよ。ESG投資、インパクト投資に関わる方には必須の内容と思います。

日本の女性が米国のインパクト投資の第一人者になっているという驚愕の事実。やはりsusutainabiltyの世界では女性は強いです。

私が質問しておいた、米国SIBに関するコメントと日本に対するインプリケーションについてもコメントしていただいています。

鈴木絵里さんのご紹介
米ドミニ社は責任投資分野における先駆け的投資運用会社であり、全ての投資対象について、環境、社会、ガバナンス(ESG)を投資決定プロセスに組み込み、長期リターンの最大化を目的とする。

関西学院大学法学部卒業後、商社と外資系化学品メーカーに勤務。コロンビア大学国際公共学大学院にて国際関係学修士号取得、気候変動と経済開発専攻。国際開発機関にて途上国での温室効果ガス排出削減プロジェクトの社会環境影響評価調査に従事した後、

2008年より現職。株式や債券投資ファンド、コミュニティ投資のための幅広いESG調査分析経験を有し、発行体のみならず、産業団体や市民団体、政府機関などのステークホルダーとの積極的なエンゲージメント(対話)を行い、さらには議決権行使なども含めESGへの取り組みや長期的視野を促すなど企業行動や公共政策に影響を与える活動に取組む。
http://sustainablejapan.jp/2016/05/17/bloomberg-social-impact-research/22313

セミナー参加報告「サステナブル投資の主流化に向けた潮流と今後」


昨日は、PwCが主催の「サステナブル投資の主流化に向けた潮流と今後」セミナーに参加。http://www.pwc.com/…/2…/sustainability-investment160526.html

PwCの意図としては、サステナブル投資、インパクト投資を盛り上げることで、その支援ビジネスを拡大していくことと思われる。参加者からすると、全体としての方向性がわかりにくい消化不良のセミナーだった。

何がインパクト投資の主流化をもたらすのか、その需要面、供給面、阻害要因などの整理がもっと必要でしょう。そしてそれに合う形でプレーヤーに話をしてもらう。

私が最後に質問したのは、
質問

投資家がインパクト投資が成り立つには、企業が財務パフォーマンスとESGパフォーマンスを両立が必要がある。しかしそれにはビジネスモデルや製品プロセスにイノベーションが必要でそんなにやさしいことではない。では、日本企業で具体的にどの銘柄を、どう評価して組み入れたのか?

質問
インパクト投資の1つの商品としてソーシャルインパクトボンド(SIB)が考えられるが、SIBは機関投資家の投資対象として組み入れられる可能性はあるのかどうか? その根拠は?

出席者からは明確な解答はなく、インパクト投資といっても、特に上場銘柄の組み入れの場合はインパクト投資という何か面白そうな匂いを香らせるテーマ投資という感が拭えない。

明るい兆しは、若者、女性、ミレニアム世代が投資に意味を求めており、インパクト投資はその流れにあうだろうとう点。

基本的なことだが、今までESG投資とインパクト投資の違いについて質問して、うまく答えられた人はほとんどいない。

ソーシャルインパクト・リサーチ社の河合パートナーに質問したところ、ESG投資は方針やアウトプットレベルのKPIで投資の成果を判断するのに対して、インパクト投資はもっと社会課題、社会に対するアウトカム、インパクトレベルで投資の成果を図ると答えた。

インパクト投資といっても基本的な点をまずは押さえないと、人に対する説得力を持たすことは難しいだろう。

2016年5月26日木曜日

NPOの社会的インパクト評価と上場企業の企業価値評価は実は本質的に同じ?


この図は何の図からわかりますでしょうか?

これはCSファーストボストンの証券アナリストがアマゾンのアナリストレポートに記載した図である。

時期は1999年。
米国ではインターネットバブルが叫ばれる中で、株価が割高なアマゾンが槍玉に上がっている中、この証券アナリストはいやいやアマゾンは書籍だけでなく、次に音楽、ビデオの販売にも進出するから株価は割高ではないのだと主張した。

正しかったのは、このアナリストだった。しかし、アマゾンには電子書籍、AWSなど、もっと多くの、もっと価値ある事業の進出オプションが実際には追加され、アマゾンの企業価値を押し上げたのだ。

ちょうど私もこの時にウイットキャピタル証券でアナリストをしていてインターネット企業はリアルオプションで評価すべきというレポートを書いた。少なからず反響はあったが、実際に企業価値のバリュエーションに応用できた機関投資家はいなかったと思う。

デスカウントフロー法(DCF)の企業価値評価と、リアルオプションを用いた企業価値評価は実は本質的に異なる部分がある。

不確実性が高いことはDCF法では企業価値にマイナスだが、リアルオプションの場合は不確実性が大きいことは企業価値にプラスになるのだ。この部分が肌感覚で本質的にわからないと実はベンチャーキャピタリストも務まらない。ベンチャー企業は投資家にとってリアルオプションだからだ。

ここで注意すべきは、金融オプションもリアルオプションも行使しないと価値は実現しない点だ。実際に最適なタイミングで行使できるかどうかが価値を顕在化できるかどうかを決める。金融オプションでいうところの行使期限だ。

これが何を意味しているのか? つまり、行使の主体たる経営者が、状況判断、チャンスに敏感でないとオプション価値が小さくなる。

現在、私は、その企業の社会的価値への投資がリアルオプション的な価値を生み出すことで、企業価値(=時価総額)を高めることができると主張している。幾つかの前提を置きながら。

そうであれば、社会にいいことをする会社は、投資家にとっても儲かる会社になりうる。このあたりをBloombergのカンファレンスの講演では機関投資家に説明するつもりだ。

リアルオプションを実際の数値に落とし込むことは数学的に素養がないとやや難しいかもしれないが、簡易的にはソーシャルインパクト・リサーチ社が開発した、ソーシャルインパクト指数®を用いることで、このリアルオプション的価値を捕獲することはできる。

ソーシャルインパクト指数®は社会的企業、NPOの価値評価として開発されたものだが、この指数は上場価値の価値評価、インベストメントツールとして有用なのだ。特に、外生的な不確実性が高い分野や企業評価においては、このソーシャルインパクト指数®はうまく機能する。

最後までお読み頂きありがとうございます。参考になりましたいいね!をお願いします(笑)

2016年5月25日水曜日

欧州ではSDGsよりもサーキュラー・エコノミーがホット


CSR先進国(欧米)でSDGsにどう取り組んでいるかをCSR専門家の方に調べてもらっています。フィンランドに住んでいて、ソーシャルインパクト・リサーチの外部リサーチャーです。日本の中では比較できる人がいないレベルのCSRプロフェッショナルの方です。

以下
「先進的とは言えませんが、唯一SDGsに細かく紐付けされたレベルのものがノキア社です。


合理的なマテリアリティ設定ができるかについては、SDGコンパス内に「ロジックモデル(投入・活動・産出・結果・評価)を用いて結果および影響に関するデータ収集ができなくても、産出データは収集できるから収集すべきデータを把握することができる」とあり、これでは「半」合理的ではないかと思います。結果および影響の代替指標として投入ないしは産出データを利用しているので、これからは結果評価の数字が必要になると思います。

SDGsをこう使いましょう的なツールは、UNGCKPMGが開発した"SDG Industry Matrix"が近いのではないかと思います。業界ごとの事例集があります。


SDGsに沿ったSROIは、どこも今検討中または開発中で、今年はまだ手探りの状態だと思います。

こうして最近専門家たちの話しを聞いていると、SDGsを達成することに集中して、その後のインパクトまで認識していないような気がします。SROIが欧米で広がってきていると日本国内では思われがちですが、欧州圏内においてはそんなに話題にはのぼっていません。ちなみに今のホットトピックスは「サーキュラー・エコノミー」です。

*いかがでしょうか? 参考になりましたらいいね!をお願いします!

2016年5月24日火曜日

ご案内:603 Bloombergカンファレンスのご案内

63日に、Bloomberg社とソーシャルインパクト・リサーチ社で、ESG投資のカンファレンスを行います。機関投資家と企業向けですが、ソーシャルインパクトボンドの話も米国bloombergから話してもらいますので、スポンサー特権で30名程度ソーシャルセクターの方もご案内できればと思います。ご興味ある方は、熊沢までご連絡ください。email:takukumazawa@gmail.com
https://www.dropbox.com/s/sc1hlpnxgfvsbuc/%E6%9C%80%E6%96%B006.03.16%20invitation.pdf?dl=0

来月、ロバート・マートン博士が来日します。


すごく頭がきれるので講演が楽しみですね。講演テーマも、「金融イノベーションは我々の未来を変えるか? 高齢化社会のソリューションを見つけることができるか?」というとても興味深いテーマです。このテーマの解を見つけることができたら、もう1回ノーベル賞を確実に取れるでしょう(笑)自分もいつも考えているテーマです。

ご参考
開催日時:2016614日(火)19:00-20:30 (1830受付開始)

テーマ:「Can Financial Innovation Change Our Future?
  - Creating/Finding a Retirement Solution in an Aging Society

会場:一橋大学一橋講堂
    東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センタ-
    
http://www.hit-u.ac.jp/hall/file/menu-016/file_01.pdf

言語:英語(通訳なし)
講師: ロバート・マートン博士 (1997年のノーベル経済学賞受賞者)
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン・スクール・オブ・マネジメント 特別教授 ハーバード大学 名誉教授

参加料:日本証券アナリスト協会検定会員(CMA) 2,000

日本は社会的インパクト評価ブームだが、、2〜3年以内にブームは終わる砂上の楼閣だ


日本でも社会的インパクト評価ブームの様相を呈してきた。
行政、財団、そして企業も色気を出すが、

しかしながら、
ソーシャルインパクト・リサーチ社でNPO、企業、行政など様々なインパクト評価プロジェクトに関わった経験から申し上げると、このブームの結末は既に見えている。

日本のインパクト評価ブームは2年以内に残念な結果に終わる。
そもそものrigidな枠組みがなくては、評価は砂上の楼閣だ。

その理由は、評価のための評価、評価者のための社会的インパクト評価にとどまっているからだ。

評価する側からお金をもらって評価するという構造なので、厳しさが足りない。

例えば、行政は自分たちが予算をつけている事業の正当性を数値で証明して予算を確保したいという狙いだ。NPO側も同じようなものだ。

また、インパクト評価者の専門家のレベルが低すぎる、、というあまり触れられたくない事実もある。話をしたり、一緒に仕事をしたりしてみると、大学の先生、シンクタンクの人など日本のインパクト評価者はまだ小学 1年生レベルで、人に教えられるレベルには程遠いのが現実だ。

例えば、企業アナリストの世界でも、財務数値の計算方法だけわかれば企業分析ができるわけではなく、それはアナリスト1年生の仕事で、その単純な計算式を超えた部分、業界構造の予測力などでアナリストの本領が発揮される。

ロジックモデル知っています。SROIの計算式を知っていますというのはほんの入り口に過ぎない。

それは、自分で評価指標を開発しないで、海外の道具を安易にありがたがるという貧しい根性、メンタリティにも起因しているとのではないか。ソーシャルインパクト・リサーチもArunはそうだか、独自に評価手法を開発して、投資ファンドも自分でやっているとメタ能力が高めることができる。それぞれの評価手法の限界も見えてきて、他人の評価手法(道具)でもうまく使えこなせることができるようになる。

こういう中で
日本の目指す方向としては、評価のための評価、評価者のための社会的インパクト評価ではなく、簡易に、リーンに、事業に役立つインパクト評価、Accumenが目指す方向性が健全だし、日本のソーシャルセクターのためになるのではないか、というのが私の意見。

評価者のための社会的インパクト評価は誰のためにもならないのでいらない。

金融イノベーションは社会進化を促すかどうか?


現在、日本でもフィンテックブームが起きつつあり、様々な分野で新しいベンチャー企業が生まれている。

このフィンテックの多様な分野をどう捉えるべきか? 何がイノベーションで、何がイノベーションではないのか?

ノーベル経済学賞を受賞したロバートシラー教授はここ数年の金融イノベーションとして、The Benefit corporationSIBcrowdfundingを挙げている。

この3つの共通点は何か?

この3つは金融が社会性、外部性を取り込んでいるプロセスとして捉えることができる。それこそが金融イノベーションであり、社会進化を促すかどうか金融イノベーションの判断基準であるべきである。

より儲かること、単に、リスクリターンを改善するロボアドバイザーは金融イノベーションとは言えないのではないか ?

海外では金融摂取(貧しい人たちを社会に取り込むこと)はフィンテックの非常に重要なテーマである。ケニアで『M-PESA(エムペサ)』というモバイル送金サービスが大成功を収め、人々のインフラと化していることをご存じでしょうか?

まだ日本ではテインテックのそういう捉え方は少数であるのは非常に残念だし、金融イノベーションの機会をむしろ失っていると言えるだろう。

フィンテックを社会進化を促すものかどうかという視点で捉え直したらどうか? 資本主義の修正もまさしくフィンテックのど真ん中のテーマと言えるだろう。

ちなみに、ソーシャルインパクト・リサーチは機械学習、人工知能を用いるESG投資レコメンデーションエンジンを開発した。弊社もフィンテックと言えるか? いや他人がどう分類するかはとても小さな問題であり、このエンジンが本当の社会進化を促すことができるかどうか、ソーシャルインパクトをもたらすかどうかこそが大きな問題なのだ。

2016年5月22日日曜日

休眠預金は一体誰のものなのか?


日本で休眠預金を活用するアイデアは、もともとフローレンスの駒崎氏が考えてETICのリサーチプロジェクト(SAL)で調査を行った経緯がある。
http://www.etic.or.jp/…/research_proje…/001_Kyuminkouza.html

そういう経緯もあり、今回の休眠預金活用の対象は、(1)生活困窮者(2)子ども・若者(3)活力が低下する地域など、駒崎氏が代表のフローレンスが関係する子育て分野が預金の活用対象分野に入っている。子育てが重要であること点に異論はないが、多様なNPO活動の中で、なぜこの3分野に絞るかは全く恣意的であり説明を要するだろう。

今回、設立された新公益連盟は駒崎氏が代表理事をして、その理事も子育て、教育分野の団体が多く、休眠預金の資金を一括管理する団体として、この新公益連盟が想定されている。http://www1.shinkoren.org/

給付型奨学金を休眠預金で行おうというchang.orgのキャンペーンも駒崎氏が立ち上げたものである。世間を扇動することで国会議員にプレッシャーを与えようという意図があると思われる。

皮肉なことに、共産党の宮本議員との討論の中で、奨学金のような個人に対する費消が休眠預金の対象になるかどうかで国会議員間の意見が分かれたことが、休眠預金のスキームの曖昧さを露呈させる結果となった。

このように見えない糸を繋げていくと、
休眠預金アイデアを日本で考えた人:フローレンス駒崎氏
休眠預金の資金管理団体の代表:フローレンス駒崎氏
休眠預金の資金の受け手:フローレンス駒崎氏+そのお友達
休眠預金でマスコミ世間を扇動している人:フローレンス駒崎氏
国会議員を裏で動かしている人:フローレンス駒崎氏

と言う構図が透けて見えてくる。

この構図の中で、対象分野の恣意性とガバナンス体制の不備が、共産党の宮本議員や識者によって度々指摘される事態となっている。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamoto…/20150825-00048795/
http://blogos.com/article/141044/

休眠預金を世の中を良くすることに使うという基本的な発想、アイデアには賛成であっても、現在想定するこのスキームには納得いかない人も多いだろう。
休眠預金の活用は、NPO、ソーシャルベンチャーに恒常的な資金財源を作り出す一大悲願として裏で画策されており、一体全体この休眠預金は誰のためのものなのか? 最終的に誰のものになるのだろうか?
http://www.etic.or.jp/socialagenda/research_project/001_Kyuminkouza.html

2016年5月20日金曜日

休眠口座活用法案の見送りはソーシャルギャップが原因?


今国会での休眠口座活用法案の成立は見送りになりました。

ソーシャルセクターにとっては年500億円の軍資金は大きなインパクトがありますので、いろいろな方が影でご尽力、奔走されたのだと思います。

この法案成立を見越した形で、新公益連盟のスタート、社会的インパクト評価のシンポジウムetc、様々なイベントも目白押しです。

ただし、、一般国民、預金者の立場から見ると休眠預金の活用は、法的にも心理的にも不十分、不安な面もまだ多く、そういう意味では、ソーシャルセクターが自分たちの思いが先走り、国民的な合意合意形成に失敗したのだと思います。

ソーシャルギャップの大きさを痛感。

このソーシャルセクターと一般国民の温度差、ソーシャルギャップをよく感じるのが選挙の時です。ソーシャルセクターでかなり有名な人でも意外と選挙では落ちる人が多い。

そもそもの、休眠預金の活用に法律的な根拠があるわけではなく、論拠は米国と韓国で休眠口座を活用してソーシャルセクターのお金に回しているということが最大論拠ですから。たとえ議論を尽くしたとしても、国民的合意が得られるテーマでもないのかもしれません。

新公益連盟のマニフェストも、ほとんどがソーシャルセクターにいかにお金を回すかという主張であり、ここにもソーシャルセクターと世間の間のソーシャルギャップが感じられます。

自分はソーシャルセクター、世間の両方からギャップがあるわけですけれども(笑)

インパクト投資、インパクト評価、ソーシャル認証のトライアングルがどう形成されるかで日本のソーシャルセクターの形成に影響を及ぼすことは間違いないでしょう。

SDGs(持続可能な開発目標)を、企業CSRに取り込む具体的な方法は?


CSRコンサルタントの安藤さんがSDGs(持続可能な開発目標)を、企業CSRに取り込んだ日本企業を9事例紹介されています。http://andomitsunobu.net/?p=12314

SDGが施行されたのは20161月なので、今回のCSR報告書ではSDGsに触れたレベルに留まっています。

来年の報告書では、SDGs17つの目標に紐付けて、マテリアリティの特定、KPI設定を開示する企業も出てくるものと思われます。

SDG Compassという形でGRIwbcsd,、国連グローバルコンパクトが企業側の活用指針も、まとめてくれています。中身はインパクト評価手法に近いものがあります。

SDGs2030年の目標を設定しているので、目標(未来)から現在にさかのぼりになりますので、企業側のバックキャスティング的な視点を促す点は意義が大きいと思います。

私は、企業側が各社のSDGs目標を開示してくれた後で、そのギャップを埋めるために、NPO/社会的企業と協働する、ギャップ& インパクトの仕組みができないかと考えています。炭素排出市場でキャップ&トレードの仕組みが実現したようなイメージです。

SDGs(持続可能な開発目標)を企業CSRに取り込む研究会をやってみたいと思いますので、ご興味ある方いらっしゃいますでしょうか?
https://youtu.be/1c48vhokWLQ

2016年5月17日火曜日

太陽光のインフラファンドの上場登場!


日経を見ていたら、タカラレーベン・インフラ投資法人のブックビルディングの広告が掲載されていた。

中身は太陽光発電設備100%の運用で、取得金額は78.7億円である。太陽光のインフラファンドの上場は今回が初目てではないかと思う。主幹事はみずほ証券である。

今後、資産運用会社のスパークス・グループ(8739.T)、いちごグループホールディングス(2337.T)、太陽光発電デベロッパーのリニューアブル・ジャパンも投資法人の上場を計画しているようです。

固定価格買い取り制度(FIT)があるから成り立つファンドでもあり、逆にそこがリスクでもある。太陽光はややブームは去った感もあるが、出口が増えることは投資サイドからは望ましいことではある。

この自然エネルギー系のインフラファンドが、果たしてリスクリターンであうものなのか、投資家の期待に応えられるものなのか注視していきたい。

社会的インパクト評価はどこを目指すのか?


三菱UFJリサーチ&コンサルが主催した「米国における社会的インパクト評価の現状に関するセミナー」に参加した。

 個人的な印象は、インパクト評価のフレームを開発・提供している団体へのヒアリングが主で教科書的な話が多かった。全体の総括も、教科書的(米国:民間の強力なイニシアティブ+多様な人材+マルチセクターによる協働)で、大変失礼ながら、米国にわざわざヒアリングに行くまでもないでしょ、と突っ込みたくなる内容だった。

米国でSROIはほとんど聞かれることはない。もっぱらRCT Randomized Controlled Trial:ランダム化比較試験)である(図表)。

様々なインパクト評価手法・ルーツはあるにしろ、RCTをベースに、NPONGOのプログラムを評価していくという方向性は変わらないと思う。

各インパクト評価手法でアプトプットやインパクトの捉え方や範囲が違ったりするが、エビデンスベースを作るベースであるRCTは不可欠ではないかと思う。

日本が足りないのはこの部分の認識とマインドセットであり、最初にインパクト評価で着手すべきなのはこの部分ではないかと思う。

日本でインパクト投資のエコシステムをどう作るかという問題提起があった。

理論的にはインパクト評価ができるとインパクト投資が活発化するように思えるが、おそらくインパクト評価が最初のハードルではないのではないかと思う

実際、米国ではAcumenはインパクト投資会社であるが設立当初はインパクト評価はうたっていなかった。インパクト評価がなくても、また未熟であってもインパクト投資は成長する証左である。現在、Acumenはリーンデータによる評価、事業の改善という方向に向かっており、投資家向けのインパクト評価の方向も厳密、精緻化よりもより簡易なリーンな方向に向かっている。インパクト投資においても、SIBの評価においても、SROIは使いにくいので何れ廃れていく方向ではないかと思う。