2016年10月11日火曜日

日本がノーベル経済学賞の不完備契約理論から学ぶことは?


2016年のノーベル経済学賞は、米ハーバード大学のオリバー・ハート教授、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のベント・ホルムストロム教授に決まりました。

テーマは不完備契約理論。契約は完全ではないから、利害関係が異なる者同士の協調をいかに生み出すか? その取引、ガバナンスメカニズムをどう設計できるか?

日本も、日本版スチューワドシップコードや、コーポレイトガバナンスコードなどソフトロー(契約)で投資家による企業へのガバナンスを強化する施策を打ち出しました。しかしながら、基本的に契約は不完備契約ですから、そのコードを設定した目的が実現されるかどうかはまだまだ未知数です。

ガバナンスを強化したら企業は収益性が高くなるのか? 
国ごとのガバナンスの形態の違い、歴史的経由も無視して、欧米型の株主型へ日本が移行を目指すことがいいことなのかどうか?
ROE
というKPIを企業価値の代理変数としていることの無理はないのか?

現在のところ、企業の収益性が高まった証拠も、企業が積極的にリスクをとった設備投資をしている証拠、投資期間が長期化した証拠はありません。インデックス、パッシプ運用している運用会社に、企業と対話するインセンティブ、またその見返りはあるのかどうか?etc

不完備契約理論を紐解くと、むしろ、ある条件のもとでは、投資家のガバナンスの強化が企業価値の低下を招くケースも理論的に示すことが可能だと思います。日本も会計や法律の専門家主導によるガバナンス改革に、ゲーム理論家、不完備契約の理論家による視点を取り入れた方がいいでしょう。

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