この図は何の図からわかりますでしょうか?
これはCSファーストボストンの証券アナリストがアマゾンのアナリストレポートに記載した図である。
時期は1999年。
米国ではインターネットバブルが叫ばれる中で、株価が割高なアマゾンが槍玉に上がっている中、この証券アナリストはいやいやアマゾンは書籍だけでなく、次に音楽、ビデオの販売にも進出するから株価は割高ではないのだと主張した。
正しかったのは、このアナリストだった。しかし、アマゾンには電子書籍、AWSなど、もっと多くの、もっと価値ある事業の進出オプションが実際には追加され、アマゾンの企業価値を押し上げたのだ。
ちょうど私もこの時にウイットキャピタル証券でアナリストをしていてインターネット企業はリアルオプションで評価すべきというレポートを書いた。少なからず反響はあったが、実際に企業価値のバリュエーションに応用できた機関投資家はいなかったと思う。
デスカウントフロー法(DCF)の企業価値評価と、リアルオプションを用いた企業価値評価は実は本質的に異なる部分がある。
不確実性が高いことはDCF法では企業価値にマイナスだが、リアルオプションの場合は不確実性が大きいことは企業価値にプラスになるのだ。この部分が肌感覚で本質的にわからないと実はベンチャーキャピタリストも務まらない。ベンチャー企業は投資家にとってリアルオプションだからだ。
ここで注意すべきは、金融オプションもリアルオプションも行使しないと価値は実現しない点だ。実際に最適なタイミングで行使できるかどうかが価値を顕在化できるかどうかを決める。金融オプションでいうところの行使期限だ。
これが何を意味しているのか? つまり、行使の主体たる経営者が、状況判断、チャンスに敏感でないとオプション価値が小さくなる。
現在、私は、その企業の社会的価値への投資がリアルオプション的な価値を生み出すことで、企業価値(=時価総額)を高めることができると主張している。幾つかの前提を置きながら。
そうであれば、社会にいいことをする会社は、投資家にとっても儲かる会社になりうる。このあたりをBloombergのカンファレンスの講演では機関投資家に説明するつもりだ。
リアルオプションを実際の数値に落とし込むことは数学的に素養がないとやや難しいかもしれないが、簡易的にはソーシャルインパクト・リサーチ社が開発した、ソーシャルインパクト指数®を用いることで、このリアルオプション的価値を捕獲することはできる。
ソーシャルインパクト指数®は社会的企業、NPOの価値評価として開発されたものだが、この指数は上場価値の価値評価、インベストメントツールとして有用なのだ。特に、外生的な不確実性が高い分野や企業評価においては、このソーシャルインパクト指数®はうまく機能する。
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