2016年8月30日火曜日

本の紹介:ROEが奪う競争力 ―「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す 手島 直樹 (著)


SIRの熊沢です。

ROEが奪う競争力「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す 手島 直樹 ()を読了しました。

この本のユニークな点は、世間的には伊藤レポート万歳、ROE8%高めるべし、それが企業、運用会社、国民にとってもプラスになるというテーゼ一色になっているにもかかわらず、あえてそれに反対している点です。

ROE、社外取締役、株主還元など投資家の言うことを聞きすぎると企業はろくなことにならないよと警鐘を鳴らしています。

私も同感です。
ソニーの出井さん時代のEVA導入の失敗をみてください。製造業、開発会社が財務主導になると、開発力、イノーベション価値、将来のリアルオプション価値を失ってしまいます。

反対の理想はアマゾンです。(長期では、投資家にとっても理想的企業であることが証明されています)

会計的利益を気にしない
アナリスト、証券市場を気にしない
長期的なキャッシュフローの拡大に取り組む
イノベーションは長期的に取り組む(7年以上かけて)
株主還元(配当による)はしない
ビジネスチャンス、リアルオプション価値を逃さない
経営者のは長期的ビジョンに沿った経営を徹底する(顧客に評価されるナンバーワン企業を目指す)

現在のガバナンス強化はこの反対のインセンティブを与えていますので、企業価値にはマイナスにあるでしょう。

人間は、数字を目標にすると、どうしても短期的、近視眼的になります。今すぐやる必要なこととと、本当に重要なことの区別でいうと、本当に重要なことをおいてもいて、今すぐ必要な重要ではないことに目と行動が向いてしまいます。ROE8%ROEを高めるというのもこの効果を与えてしまっています。

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