2016年4月21日木曜日

社会的企業のための新しい法人格は本当に必要なの?


経済産業省は「地域を支えるサービス事業主体のあり方に関する研究会」で社会的企業の新しい法人格を検討する研究会の報告書を取りまとめました。

ざっと見た限り、結論が導かれたわけでも何か目立った提案があるわけでもありません。この議論は周期的に(4-5年)繰り返されるテーマになっています。

何で新しい法人格が必要なの? 法人格は制度なので、なぜ新しい制度が必要なのか?

ノーベル経済学賞のダグラス・ノースは『制度とはゲームのルールである』と定義しています。ですから、新しい法人格を作るということはゲームのルールの変更を意味しています。

社会的企業の新しい法人格を作ることで、他のプレーヤー(例:金融機関、寄附者)の信念や認識、インセンティブに影響を与えて、取引コストを低くする新しいゲームを設計できるかという問題になるわけです。

税制の変更をともなわないとするとかなり難易度が高いゲームであることがわかります。プレーヤーの明示された認識と共に、明示されていない認識の変更や経路依存性や歴史的経緯も伴うからです。

報告書の議論の中で、経済的価値と社会的価値の両方を追求するのがいいよねという方向性があります。この両方の価値を追求する場合の最適な器は日本ではどこになるのでしょうか? 企業? NPO?、社会的企業?

企業が社会的価値を追求する方向性と、NPOが経済的価値を追求するのではどちらが近道か?

このように考えていくと、結局これは法人格の問題ではないんですね。ある特殊なコンピタンスを持つごくごく一部の主体が両立に成功している。
ですから、新しい制度を作ることがある種のシグナリング効果は生み出すでしょうが、そもそも制度で対応しようとするのがナンセンスなんですね。
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160420003/20160420003-1.pdf

0 件のコメント:

コメントを投稿